教会学校 聖書のおはなし
博士たちの礼拝」 マタイ2:1-12  2021年12月19日 綿谷 剛兄

【東方の博士たち】
 今日は、クリスマスの物語の一つとして語られる「東方の博士の来訪」のお話。聖書の記述からするとイエス様の誕生から2年以内にあったできごとと思われます。

 博士とは占星術者だと言われていますが、テレビ番組に出ている「星ひとみ」さんのような個人の運勢を占う現代の占い師を想像するとかなり違うようです。古い時代、国の基幹産業は農業であり、いつ種をまき、いつどのような世話をし、いつ刈り取るのか、そのためには天体の動きを研究することがとても大切でした。また、天体の動きは戦争や政治的な争いの結果をも支配すると考えられていました。科学と占いの区別が明確でなかった時代、博士たちは天体の動きから世界の動きや未来を読み取る働きを担う天文学者兼占星術者でした。

 東方とはおそらくバビロニア(今のイラク)だったであろうと言われていますが、バビロンからエルサレムまで約1000キロ程度ですので、東海道53次(江戸と京の間)が約500kmで徒歩で約2週間の旅だったらしいので、その倍くらい1か月程かかったかもしれません。

 彼らの見た星がどのようなものだったのか、彗星とか超新星とか惑星の会合であるとか言われますが、1か月間、同じ西の方向に輝き続ける星ということなので、超自然的な現象だったのだろうと思います。しかし、彼らはその星の出現をユダヤの新たな王の出現を示すものと確信し、厳しい道のりを旅したのでした。

 なぜ、異国の博士が他国のそれも小さなユダヤの国の王の誕生を祝うために遥々旅したのか、分かりません。その頃の時代は、国と国、民族と民族が争い、権力者たちが身内同士で殺し合う、殺伐とした時代でしたが、その中で、きっと単なる小国の王というだけではなく、世界に平和をもたらす希望の王の誕生を思い描いていたのではないかと思います。

【ヘロデ王の動揺】
 さて、博士たちは首都エルサレムに到着しますが、町の中に入っても、思い描いていた希望の王の誕生を祝う雰囲気がありません。そればかりか町の誰に聞いても王の誕生を知るものがいません。

 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか?
  私たちはその方の星が昇るのを見たので、礼拝するために来たのですが、、、、。」

 見慣れない服装をした異国の博士たちの一行は、きっと人々の目にとまり、彼らが語る不思議な話は、すぐにヘロデ王の耳に入ります。

 さて、ヘロデ王は、もともと王家に生まれた者ではありませんでした。激しい権力争いや謀略の中、騙し騙され、裏切り裏切られる中で、それまでの王家を倒して王となった人物であり、猜疑心の塊のような人物でしたので、王の座を奪う可能性のある人物が出現したという話は、けして放ってはおけないことがらでした。

 そこで、ユダヤ教の宗教指導者である祭司長や律法学者たちを集めて、聖書の預言を調べさせました。彼らはすぐにミカ書5章の中に、この預言を見つけ出します。

 「ベツレヘム、エフラテよ。
  あなたはユダの氏族の中で、あまりにも小さい。
  だが、あなたからわたしのために
  イスラエルを治める者が出る。」

 ヘロデ王は動揺しました。ただちに、東方の博士たちを呼び寄せ、星が現れた詳しい時期などを聞き出し、
 「行って幼子について詳しく調べ、見つけたら知らせてもらいたい。私も行って拝むから」
といって、彼らをベツレヘムに送り出しました。
 「拝むから」というのは嘘で、王となる者の誕生が本当であることが分かれば、ヘロデ家の王位、政権を脅かす存在として、今のうちに抹殺してしまうためでした。

【博士たちの礼拝】
 博士たちは、王の言葉を聞いて出て行きました。 ベツレヘムに向かって南に進みだすと、東方で見た星が再び現れ、彼らに先立って進みました。
 ベツレヘムは王の宮殿やヘロデが建設した壮大な神殿のあるエルサレムと比べると小さな小さな町でした。
 星は、ついに、あるところに来るとぴたっと止まりました。
 博士たちはそれを見て、この上もなく喜びました。

 「ここだ! 世界を照らす希望の光がここにおられる。今私たちはその方にお会いできる。」

 その場所が家であったとは書かれていません。家畜小屋であったとも書かれていません。少なくとも、王が生まれるにふさわしいと思われるような場所ではなかったはずですが、それでも博士たちは疑うことがありませんでした。

 家の中に入ると、幼子と母親がいました。
 「この子がユダヤ人の王としてお生まれになった方、この方こそ救い主だ」
 博士たちは確信し、ひれ伏して、礼拝しました。

 彼らは、宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として捧げました。

 その夜、博士たちは、夢で、「ヘロデ王のもとには戻らないように」と警告を受けたので、エルサレムには戻らず別の道を通って帰途についたということです。

【不思議なできごと】
  クリスマスのできごととして聖書に書かれたことがらは、不思議なことばかりですね。

 異国の占星術の博士。 聖書では天体を礼拝することも、占いをすることも禁じられています。 おそらく、ユダヤの人々からは本当の神様から最も離れた存在であると思われていた立場のひとつではなかったかと思われます。

 その博士たちがイエス様を礼拝した最初の人々となったことが聖書に記されています。

 もしかしたら、私たちが神様から最も遠いと思っている人々が、イエス様に最も近いのかもしれないということを心に留めておきたいですね。

 イエス・キリストは全ての人を救うために、この世に来られたのです。

                 (「成長」の教案を参考にアレンジしています。)