メッセージ(大谷孝志師)
キリストの国 日本
向島キリスト教会 夕礼拝説教 2021年1月10日
ローマ9:1-9「キリストの国 日本」 牧師 大谷 孝志

 今、世界は新型コロナウイルスの感染が止む気配が見えず、未曾有をの不安に包まれている。昨年の今頃は経済的にも安定し、町も賑やかだった。今この日本の中で、私達キリスト者はどのように生きたら良いのか。パウロは「私には大きな悲しみがあり、私の心には絶えず痛みがあります」と言う。彼は「私は、自分の兄弟たち、肉による同胞のためなら、私自身がキリストから引き離されて、のろわれた者となってもよいとさえ思っています」と言う。自分の兄弟達、肉による同胞とは、4節にあるように「イスラエル人」、キリスト者達を迫害し、苦しめていたユダヤ教徒。彼は何故、彼らの為に悲しみ、心の痛みを感じたのか。それは神の子とされることも、栄光も、神の民とする契約も、神の民の生き方を定める為に与えられた律法も、神を礼拝することも、神の約束も彼らのものだから。

 このイスラエル人についての考えは、日本人にも当て嵌めて考えよと、聖書は私達に問い掛けている。パウロの時代は二千年前、イスラエルは日本から遠く離れた国。日本人の私達とは無関係に思えるかも知れない。しかし、主イエス・キリストの十字架と復活の出来事によって、イスラエル人についての言葉は全ての人に当てはまる言葉となった。10:12に有るように「ユダヤ人とギリシア人の区別はありません。同じ主が、すべての人の主であり、ご自分を呼び求めるすべての人に豊かに恵みをお与えになる」ので、「主の御名を呼び求める者はみな救われる」から。使徒16:31で彼が言った「主イエスを信じなさい。そうすればあなたもあなたの家族も救われます」との御言葉は私達の周囲の人々にも与えられている約束。私達も、自分が属する民族の人々について激しい情熱を込めて語るパウロのように、自分の周囲の人々を見よと聖書は教える。彼は自分と同じ民族の人々が、先祖代々受け継いできたユダヤ教の信仰ではなく、自分達とは無関係だと思い込んでいる新しく主イエスが与える約束に基づく、イエスを主キリスト、神の子、救い主と信じる信仰を受け入れ、救われて欲しいと心から願い、働き掛けている。

 パウロのこの言葉の背後には、ユダヤ人のキリスト者の信仰への激しい拒絶がある。使徒の働きを見ると、キリスト者を激しく迫害したのはユダヤ人達。日本でも江戸時代にはキリスト者への激しい迫害があり、第二次世界大戦中にも、ホーリネス教団の人々に激しい迫害が加えられた。彼はその迫害の中にいるローマなどの諸教会にいるキリスト者に「父祖たちも彼らのものです。キリストも、肉によれば彼らから出ました。キリストは万物の上にあり、とこしえにほむべき神です。アーメン」と言う。彼らに同胞であるユダヤ教徒を受け入れ、福音を伝えよと呼び掛ける。それは、自分達がどう思うとも、今のままでは彼らは神の子ではない。主イエスを信じる者が神の子と認められるから。何故そう言えるのか。この私達が生きている世界は、キリストが主として支配するキリストの国だから。今多くの人々が確かな将来が展望できず、不安の中にいる。しかし主は言う「これらのことをあなたがたに話したのは、あなたがたがわたしにあって平和を得るためです。世にあっては苦難があります。しかし、勇気を出しなさい。わたしはすでに世に勝ちました。」と。私達はその主イエス・キリストを信じ、そのキリストが支配する御国に生きている。恵みと平安を与えられ、生き生きと生きている。主イエスを信じる信仰の素晴らしさと確かさを人々に知らせよう。日本もキリストの国。主が自分の国とし、私達の同胞を教会に、ご自分の所へ招いているから。