メッセージ(大谷孝志師)
ソロモンが求めたもの
向島キリスト教会 夕礼拝説教 2021年7月18日
T列王3:7-9「ソロモンが求めたもの」 牧師 大谷 孝志

 今日の個所に、ソロモンが「自分のために正しい訴えを聞き分ける判断力を願った」とある。牧師であれば誰でも、遣わされた自分に必要なものは、ソロモンのように、教会に集う人々の訴えを聞き分ける知恵と判断の心と知る。相手の人に本当に必要なものは何か、どう話したらその人が自分に本当に必要なものに気付くか、それを納得できるように導けるかを判断するのはとても難しいこから。しかし、それは牧師に限らない。誰でも人間関係の中に生きているので、他人や他人同士の問題に対処する時、解決の為に知恵と力を注ぎ出さなければならない。

 勿論、祈りつつ相手と話し合い、教える時、聖霊の導きを求めるが、話すのは自分自身だから、沈黙してしまう時もしばしば有る筈。でも、話さなくてはならないので話す。だが、後悔もしばしばし、ああ言えば、こう言えば良かったとか、何故躊躇せずにはっきり言わなかったのか、と反省させられることも多いと思う。

 ソロモンは主に、父ダビデに代わって王にされた。王は国を治める為、外敵から守る為に、武力で敵と戦わなければならない。それだけでは無い。国内の様々な問題に対処し、解決しなければならない。彼は父ダビデの生き方を見てきた。神が父に大いなる恵みを施し、父も、神に対し、真実と正義の真心をもって御前に歩んできたことを知る。父同様、彼もまた有能な人だった。しかし当然だが、彼は父ダビデではない。そして彼も王として人々の問題を正しく裁かなければならない。だから彼は神に「自分のために正しい訴えを聞き分ける判断力を願った」。彼は自分自身をよく知っていた。自分が王としてこの国を治めるには神の助けと導きが必要と知っていたから。私達も彼のように王ではないが、同じ人であり、不完全な者。そして様々な個性、家庭環境,育成歴の人々と関わりをもって生きている。自分の発言、行動が他人に大きな影響を与えてしまうことが多々ある。

 神は,ソロモンの願いに応え「あなたがこれらの事を願い、自分の為に長寿を願わず、あなたの敵の命さえ願わず、むしろ、自分のために正しい訴えを聞き分ける判断力を願ったので、見よ、わたしはあなたが言ったとおりにする。見よ、わたしは,あなたに知恵と判断の心を与える」と言う。3:28には、人々は「王が下した裁きを聞いて、王を恐れた。神の知恵が彼の内にあって裁きをするのを見たから」とあり。10:7にも、シェバの女王が「あなたの知恵と繁栄は,わたしが聞いていた噂よりはるかにまさっています」と驚嘆したとある。彼の生涯を思うと決して模範的信仰者とは言えない。しかし、主は祈り求める者の声を聞き、それに応える方と聖書は教える。私達も主イエス・キリストの御心の広さ、深さ、高さを信じ、自分の一切の行いを主に委ねよう。主は求める者に与える方だから。

 しかし、主は与えるが、目に見える形、誰もが納得できる形で与えるとは限らない。自分や相手の期待を裏切る形で行われることもある。だからこそ、聞き分ける心、主の御心を悟る心を与えられていると気付こう。主は私達を愛し、最善を為す方。この世も教会も人と人との交わりによって成り立つ。私達は主に求める心と主が与えると信じる心を大切にしよう。ソロモンのように、自分が生きる場で最善の事ができるよう、神に知恵と判断の心を求めよう。私達が求める方は、私達の為に十字架に掛かって死に、復活して共にいる主イエス。私達が知恵と力を得て、この世で、教会で平安に生きる道を開いて下さっている。その主を信じ、互いに主の恵みと祝福を戴いて、主と共に生きる喜びを人々に現す者になろう。