メッセージ(大谷孝志師)
諍いの原因を知ろう
向島キリスト教会 夕礼拝説教 2021年8月22日
ヤコブ4:1-10「諍(いさか)いの原因を知ろう」 牧師 大谷 孝志

 昔、骨肉の争い程醜いものは無いと言う人がいた。<可愛さ余って憎さ百倍>と言うが、あんなに可愛がられていた親戚と遺産相続のことで裁判沙汰になりとても大変だったと聞いたことがある。お金は魔物だとつくづく痛感させられた。それ程でなくても、私達の周囲には様々な諍いが生じることがある。そして、その諍いの原因の多くは「無いものねだり」という心の貧しさにあると私は思う。

 殆どの人は「お金は有れば有る程良い」と思うのではないか。より豊かな生活ができるから。しかし、他人のものを欲しがって駄目と分かっていても、感情が理性を上回るのが人間。遺産相続争いのように少しでも多く自分のものにしようとしてしまう。そればかりか詐欺、窃盗、強盗と言った事件が頻繁に起きている。金の力で選挙に勝ったことが明らかになり、墓穴を掘った政治家達もいる。私はそんな事はしないが、当たれば良いと思い宝くじを買ったことも有る。それぐらいが精一杯かも知れないが、本当に大切な事は何かが分かっていないと、他人のものを羨んだり、妬んだりしてしまい、その結果、相手や第三者との関係が冷たくなったり、望まない冷戦状態に引き込まれそうになることもあるのではないか。

 他人のものを欲しがるのは間違いと分かっている。でも「あの人が持っていて、自分に無いのは何故だろう」「求めて与えられないのは何故だろう」。人はそんな思いが心を占領してしまうことが有る。主イエスを信じていてもそんな心の囁きに負けそうになることがある。何故か。世の友達と同じ様な生活をしたいと願って求めているから。「塀の向こう側も芝生はいつも緑」という言葉が有る。他人の生活がよく見え、自分もっと楽に、楽しく生活したいと思ってしまうから。しかしそこに諍いが生じる原因がある。考えてみれば、自分が楽をする分、他人が苦労する。それに「上を見ても下を見てもきりがない」。欲望にはきりがないし、更に、もっと良い事、楽な事を求めていると、相手を自分の秤で秤り、自分さえ良ければ良いと、相手や相手のものを自分のものと考えるようになってしまう。そして深刻な諍いが生じてしまう。だから主は本当に大切なことはこれだと教えた。「あなたは心を尽くし、いのちを尽くし、知性を尽くし、力を尽くして、あなたの神、主を愛しなさい。あなたの隣人を自分自身のように愛しなさい」と教えた。

 自分中心の生き方から自由になり、神中心の生き方をする者になること。人の事と神の事を秤に掛ける者は「二心の者」と呼ばれる。神は私達を愛し、神の事だけを考えて生きるよう願っている。そうすれば神は喜び、恵みに恵みを加える。

 そして神の恵みに満たされるなら、自分と他人を比べて焦ったり、相手のものが欲しくて夢中になっていたことが馬鹿らしく思えるようになる。何故なら、神は私に必要なものを与えており、今は無くても必要な時に与えると信じられる。だから、人から得ようとして諍いを起こしてまで争う必要が無くなるから。諍いの原因は、自分には無いという焦り。主は神を愛し、人を愛すれば良いと教える。

 しかし、現実には諍いが絶えないように、ただ神中心に生きるのは難しい。だからヤコブは「神に従い」「神に近づきなさい」「御前でへりくだりなさい」と勧める。自分の力で何とかなると思ってしまうから諍いが生じる。自分が弱く貧しい罪人と知ろう。他人を意識してどうこうするより、先ず御前にへりくだれば良いと気付こう。「主よ私を御前に生きる者として」と祈ろう。主は応えて、私の為に喜びと感謝が先に立ち、人に左右されない人生を、主が用意していると気付くから。