メッセージ(大谷孝志師)
聖書に見る人間の現実
向島キリスト教会 夕礼拝説教 2021年12月5日
ローマ3:19-20「聖書に見る人間の現実」 牧師 大谷 孝志

 私達は自分を省みると、自分の至らなさに情けない思いをする。一所懸命、心を込めてしているつもりでも、うっかり、或いは仕方なく間違いを犯してしまう。聖書は、全ての人はことごとく罪人であり、それに例外はないと教えている。

 パウロはその人間の現実を、詩篇数カ所とイザヤ書を自由に引用しながら、10-18節に描き出す。彼は、今は主イエスの十字架の贖いにより、主イエスの御名を信じた者は、神との関係が回復されている。主の新しい愛の戒めにより、信仰と希望と愛によって共に生き、主に恵みと平安を与えられ、主と共生きている。

 しかし聖書は、今の世の人々は、神との関係が破綻し、神への恐れがない中に生き、それにより人間同士の関係も破綻していると言う。しかしこの世を見ていると、それ程現実は酷くはない、人間には理性というものが有るから。しかし、人間だけが無意味に他の生物を殺すと言われ、野生動物の最大の敵は人類と言われている。人間にとっての便利さ、快適的さのみを追求した結果、自然を破壊し、地球温暖化は回復不可能と思われる程に進行している。また、コロナ禍の中で、自殺者も増え、生活困窮などが原因で、精神的に不安定な人が増大している。

 人によって社会の問題の見方は異なるかも知れない。しかしパウロは人間社会の真実の姿を見抜いている。表面的には平和に見える社会の中に、実は恐ろしく醜いものが満ちているのを見抜いていた。勿論、主イエスもご存じで、だからこそ「全世界に出て行き、全ての造られた者に福音を宣べ伝えなさい」と命じた。

 このような現実の中でキリスト者に求められているものは何か。世の人々が目に見えぬ縄に縛られ、欲望のままに生きていることは悲しいことだと知り、そして、人々にそんな生き方しか出来ないのは真の神を知らないからで、主イエスを信じるなら、神に恵みと平安を頂き、互いに受け入れ合い、信頼し合える人間関係の中に生きられる事を知らせること。その預言者としての働きが求められている。

 人間関係が破綻していると言っても、人は互いに相手を信用しよう、したいと思って生きてはいる。だから自分が相手から信じられていると思うと嬉しいし、大きな仕事を任せられていると発憤したくなる。人が信じ合えるのは素晴らしい事。

 主イエスを信じていると、主が自分と相手の全てを知ると信じられる。確かに、相手の心の内は分からないし、先の事も分からないから、相手を信じて良いのかどうか不安になる時も。しかし聖書に「あなたがたのために立てている計画をよく知っている。それは災いではなく、平安を中る計画であり、あなたがたに将来と希望を与えるためのものだ」と神の言葉が記されている。またローマ8:28で「会のご計画に従って召された人達のためには、全てのことがともに働いて益となる」と彼も言う。主イエスを信じているとギスギスした不安いから解放されると知ろう。

 確かに人の目には失敗に見えることも多いのは事実。しかし主を信じると、失敗して失うもの以上に得るものが多いのに気付ける。また失敗はその人の一部で、もっと素晴らしいものをその人が秘めているかも知れないと考えられ、互いに良いものを引き出せるようになる。主は、真の神を知らず、不必要にギスギスした関係に生きる人々に、精神的にゆとりのある生活、潤いのある生活がこの世にもあると知らせるよう私達に求めている。今日の聖書も人間の現実を描き出すことで、人々に福音がどんなに大切で必要かを教える。この福音を人々に伝えよう。