メッセージ（大谷孝志師）

全ての人の救いの為に

向島キリスト教会　クリスマス聖日礼拝説教　2021年12月26日 聖書　マタイ2:1-12「全ての人の救いの為に｣

昔はクリスマス祝会の中に主イエスの降誕劇、ページェントが必ずと言って良いほどありました。その中には必ず、三人の博士が登場ました。しかし、先程の聖書のように、博士達とあるだけで三人とは書かれていません。彼らが献げた宝物が黄金、乳香、没薬の三種だったことから生まれた伝説です。 　また聖誕劇では、博士達が羊飼い達とほぼ同時に、嬰児イエスを礼拝しますが、聖書には生まれた時とだけで、三人の家族は家畜小屋でなく、家にいます。更に、イエスを抹殺しようとしたユダヤの王ヘロデが嬰児ではなく、ベツレヘムとその周辺の二歳以下の男の子を皆殺させたとあることからも、博士達の来訪は、少なくとも誕生から一年以上後のことと考えられています。 　東方から来た博士達はエルサレムに来て、ユダヤの王ヘロデに会い、「自分達はユダヤ人の王として生まれた方を礼拝するために来ました」と言います。王はこれを聞き動揺しました。と言うのは、彼は、ユダや人と対立関係にあったエドム人で、ローマ皇帝の後押しでユダヤの王となったのです。新しく王となる者が生まれたことは、自分の地位を危うくなることを意味したからです。エルサレム中の人々も、喜んだのではなく動揺したとあります。それは彼がローマの庇護の元、冷酷、残忍な統治を行っていたからです。王が自分の地位を守る為に為に、一層の恐怖政治を行うのではと恐れたからです。 　博士達は、ユダヤ東方のメソポタミヤ文明の地域から来たと考えられています。天文学が盛んで、彼らは占星術により西方のユダヤに偉大な王が生まれると知ったのです。世界的に大きな意味を持つその新しい王を礼拝し、敬意を表することが彼らにとって必要だから、遠い道を遙々旅をして来ました。 　王は早速、祭司長達、律法学者達を皆集め、キリスト、メシアはどこで生まれるのかと問い質しました。彼らは聖書の専門家です。聖書に、ユダの地ベツレヘムに神の民を牧する王、メシアが生まれるとの預言があると知っていました。それを王に告げます。それを聞いた王は、博士達を密かに呼び寄せ、星が現れた時期を詳しく聞きます。王となる子が今何歳かを確かめる為です。そして「行って幼子について詳しく調べ、見つけたら知らせてもらいたい。私も行って拝むから」と言い、彼らをベツレヘムへ送り出したのです。 　聖書は、宗教指導者達がキリストの誕生とその場所を知っても、行動を起こさないことを暗示しています。これにより、ユダヤ人達の信仰が形骸化し、主イエスによる信仰の革新が必要だったと教えるのです。私達も誰をどのように信じているのかを吟味し、正しく主イエスを信じ従う者になりましょう。 　博士達は、ヘロデから王となる幼子はベツレヘムにいると聞き、出掛けました。彼らはその星が昇るのを見、ユダヤ人の王として生まれた方がいると知りました。でも太陽や月を始め天体は東から昇って西に沈みます。その星は異常な動きをしたことになります。その星が再び現れ、ベツレヘムに向かう彼らに先立って進み、幼子のいる所まで来て、その上に留まったのです。神は彼らを導き、必要な助けを与えました。神は私達の事も全てご存じです。 　その星が嬰児イエスがいる家に導いたのです。自分達が礼拝する為に来た王となる子がそこにいると知り、非常な喜びに包まれたことでしょう。博士達は家に入り、幼子をひれ伏して礼拝しました。そして黄金、乳香、没薬を贈り物として幼子イエスに献げました。彼らは異邦人で異教徒です。神を知らない人々です。聖書はその彼らを、主イエスの降誕を祝う最初の人々として登場させたのです。主の十字架による救いが、全ての人に及ぶことを、全ての人に知らせる為です。全ての人は神の愛の対象に入っているからでです。 　しかし彼らの来訪は、危機的状況をもたらします。主の誕生がこの世の人々を支配している悪の力から全ての人を救い出す為だからです。当然、悪の力は王ヘロデを用いて、幼子イエスを抹殺し、主イエスによる救いの業を阻止しようとします。12/15の祈祷会で「福音は聞く人々に、信仰と不信仰、軽蔑と尊敬、愛と憎しみを同時に呼び起こす」と学びました。主の誕生も、博士達の尊敬と服従、そしてヘロデの憎しみと抹殺を同時に呼び起こしました。博士達はユダヤ人の、そして自分達を含む全ての人々の王として生まれた幼子に会い、喜びに溢れました。彼らは、ユダヤ人達の神が、星をも自由に動かして、自分達をこの地のこの家にまで導いた偉大な神であると知りました。それと同時に彼らは、その幼子を抹殺しようとする王に、新しい王の関係者として抹殺される危機にも立たされました。しかし、神はご自分の計画の為に用いた彼らを見放さずに、夢でヘロデの所に帰らないように警告し、危機を回避させたのです。博士達は、安全に別の道から自分の国に帰りました。 　全ての人の救い主である主イエスの誕生を、マリア、ヨセフ、浸礼者ヨハネの父ザカリヤ、羊飼飼い達が知らされたことを三週にわたって学びました。彼らには主の使いが、直接、或いは夢で現れて語り掛けました。彼らに神の計画を知らせ、今起きている事が神の御心によると教えたのです。しかし、異邦人である東方から来た博士達には、星に導かせ、夢で警告しただけでした。神に選ばれ、神の民とされたユダヤ人とそれ以外の人々の間には明確な区別があります。神を知る知らないには決定的な違いがあるからです。生まれながらの人は神を知りません。私も高二の時に、復活の主イエスに語り掛けられるまでは、天地創造の神、全知全能の神が本当にいるとは知りませんでした。しかし、主イエスを信じて救われた時、人生は180°変わりました。神がこの世界を支配し、恵みと平安を全ての人に与える方と分かったのです。神はこの事実を明らかにする為に、最初の礼拝者に異教徒を選び、御許に招き、祝福された人々としたのです。私達が信じ、礼拝する神は愛と憐れみの神だからです。全ての人をご自分の元に招き、神の子として、永遠の命を与える方なのです。そして「いつも喜び、絶えず祈り、全てのことにおいて感謝する人として」この世に生きる者としてくれます。その事の実現の為に、十字架と復活の主は「全世界に出て行き、すべての造られた者に福音を宣べ伝えなさい」と命じています。クリスマス、主の降誕により神の恵みと愛に満ちた新しい時が始まりました。全ての人が主の救いの対象となっていることを心に刻み、感謝し、2022年も主と共に、皆で元気に歩んで行きましょう。