メッセージ(大谷孝志師)

ダニエル書について
向島キリスト教会 聖日礼拝説教 2022年8月28日
聖書 ダニエル1:3-7「ダニエル書について」

 ダニエル書は聖書の中のダニエルを主人公に、信仰者の勝利を描いた書物です。ダニエルは、エゼキエル14:14にノアとヨブと共に正しい信仰者として、28:3には知恵ある者の代表として名前が挙げられています。この書の1章に、ネブカドネツァルの時代の人とあるので、彼は前6世紀頃のユダヤ人です。この書は日本語聖書では、イザヤ、エレミヤ、エゼキエル書と共に「大預言書」の一つとして、最後に置かれています。また、聖書は内容によって分類され、この書は、ヨハネの黙示録のように、世の終わり等について神が特に選んだ人に啓示した事柄を記した「黙示文学」と呼ばれる書物の一つです。

 これから四聖日にこの書を学んで行くので、先ずその章毎の内容を簡単にまとめてみます。大きく分けると、1-6章と7-12章の二つの部分からなります。

 第一部の1-6章は、ダニエルのバビロン捕囚時の出来事です。1章は、ユダの王エホヤキムの治世第3年の出来事です。バビロン王ネブカデネツァルは、ユダヤ人の主だった人々をバビロンに捕囚として連行しました。そのユダヤ人の中から、あらゆる面で素晴らしい資質の持ち主である少年達を選び、バビロンで三年間教育を受けさせたのです。神は、ダニエル、シャデラク、メシャク、アベデ・ネゴの四人の少年に、知識とあらゆる文学を理解する力と知恵を授けました。四人は、少年達の中で、知恵と悟りにおいて傑出していると認められ、王に仕えることになりました。更に、王の質問に答えた彼らは国中の呪法師、呪文師より遥かに勝っていることが明らかになったのです

 2章には、ダニエルがネブカドネツァル王の第二年に王の夢を解き明かして王の信任を得て、王は彼をバビロンの全州を治め、知者達を司る長官とし、彼の願いにより三人の友も州の行政官に任命したと有ります。3章では、王がダニエルと三人の友を優遇するのを妬んだバビロンの人々が、ダニエルら四人が王の建てた金の偶像を礼拝すべきとの命令を守らなかったと訴え、王が火の燃える炉に投げ込みました。しかし神が彼らを護り、それを知った王は彼らの神を褒め称え、三人を重く用いました。4章には王が見た不思議な夢を全てのバビロンの知者達が意味を説き明かせなかったが、ダニエルが聖なる神の霊により、王が歩む過酷な道とその後で彼に与えられる威光と輝きを解き明かしました。その後、彼が告げた事が真実となる出来事を王が体験し、ダニエルが信じる神を天の王としてバビロン王が褒め称えたとあります。

 5章では次の王ペルシャツァル王が大宴会の最中、壁の上に不思議な文字が書かれた時、王の母がダニエルのことを思い出し、彼がそれを解き、王は彼をバビロン第三の司としました。6章には、その次の王ダレイオスの時、王がダニエルを任命して国中を治めさせようと思っていることを知った大臣や太守達が、彼を訴える口実や欠点を捜しても、見つけ出せなかったので、王に王以外のものを礼拝することを禁じる命令を出させました。ダニエルがそれに違反し、王は彼を獅子の穴に投げ込まざるを得なくなりました。しかし彼は何の傷も受けなかったのです。王は彼を中傷した者達を妻子と共に獅子の穴に投げ込みました。その後王は全国民に、ダニエルの神の前に震えおののけと命じ、彼はダレイオスとペルシアのキュロスの治世の間栄えました。

 後半の7-12章にはダニエルが見た幻と預言が記されています。7章はバビロン王ペルシャツァル元年に彼が見た夢と頭に浮かんだ幻です。四頭の大きな獣の幻と人の子のよう方についての幻、正面に立つ人が彼に告げた幻の意味が記されています。8章は王の第三年に彼が見た幻と勇士のように見える御使いガブリエルによる幻についての説明とダニエルの反応が記されます。9章はダニエルがダレイオス王元年に、預言者エレミヤの書にあった主の言葉により、エルサレムの荒廃の期間が70年で、その終わり近づいたと知り、彼が、神にイスラエル全ての民の罪を告白し、憐れみと赦しを懇願したこと、ガブリエルが彼に現れ、神の計画を告げたことが記されています。10章は。ペルシア王キュロスの第三年に、彼が大きな戦についての言葉が示され、その事を悟った後、三週間の裳に服し、断食し、身にも油を塗らなかったことと、その後ティグリス川の岸にいたダニエルに、ヨハネ黙示録のキリストを思わせる人が告げた言葉と人のような姿をした方との対話が記されています。

 11章は、9章に続く出来事が記されています。それはペルシャに起こる四人の王と一人の勇敢な王、ギリシアのアレクサンダー大王の出現が記されています。しかし、内容的には10章の続きになっています。大王の死後、帝国が分裂するとの告知の後に、シリアの諸王とエジプトの諸王の闘争があると記されています。更にローマ皇帝を思わせる神を冒涜し、ユダヤ人を迫害する卑劣な王の出現が記され、彼は思いのままに振るまい、全ての神より自分を高くするが、最後に神の怒りによって滅ぼし尽くされると記されています。

 最後の12章は、世の終わりに起きる出来事が記され、最後にヨハネ黙示録を思わせる忠実に信仰を守る者が永遠の祝福を受けるとの言葉で終わります。

 この書は、バビロンに捕囚の民として連行され、迫害、苦難に直面しているユダヤ人に、彼らが神に対する信仰を固く保ち、神が自分達を護り導き、最後に勝利を与えると確信して、信仰を持ち続けるように教える書物です。

 そして具体的に、ダニエルに起きた出来事を通して、世の支配者の力が如何に強くとも、神は彼らにご自分の力と権威を示し、ご自分の民を護り導き、神の民に敵対する力を打ち破り、必ず勝利させる方であると教えています。

 私達も、彼に示された主の言葉を通して、終わりの時には激しい苦難の時が来るけれども、いのちの書に名が記されているなら、皆救われると教えられます。その時、死んで大地の塵の中に眠っている人々も目を覚まします。ヨハネの黙示録に記されているように、世の終わりに死人が復活するからです。そして新しい王国が出現し、神の民はその王国に生きると教えています。
 この復活の時、いのちの書に名を記された人は、死んで滅びるのでなく、復活し、主に従って世に生きた賢明な者達として、その報いを受け、大空の輝きのように輝くのです。そして、人々を教え導いた人々、殉教の死を遂げた人々は、永遠に星のようになると教えます。しかし、復活した神の民でも、主に繋がっていなかった者、神の民を迫害した者は、恥辱を受け、永遠に神に嫌悪され、滅ぼされてしまいます。ダニエル書は、神がダニエルを通して捕囚中の神の民に、そして今も罪と悪の誘惑に曝されている私達主の民に、パウロの言葉を借りれば、堅く立って、動かされることなく、いつも主のわざに励めるよう、真理を知らせ、慰めと勇気と希望を与える書物なのです。