メッセージ(大谷孝志師)
新しい自分への旅立ち
向島キリスト教会 夕礼拝説教 2023年2月5日
出エジプト14:26-31「新しい自分への旅立ち」 牧師 大谷 孝志

 今から三千数百年も昔、イスラエルの人々はエジプトで奴隷生活を送っていた。彼らは神に助けを求めた。神は彼らの叫びを聞き、モーセを選び、エジプトから脱出させると彼らに告げた。 脱出後、主が全会衆の数を数えさせた時、20歳以上の男子で戦に出られる者だけで、603,550人。女性や子供を入れれば膨大な人数に。そんな大量の人々が国外に出たら、エジプトの人々も困るし、それを認めた王も威信失墜する。王は当然認めず、要求の報復として日干しレンガを二倍作り、監督を通して与えられていた材料も自分達で集めよとの厳しい命令を下した。イスラエルの人々は当然モーセを恨み、彼に不平をぶつけた。しかし彼は怯まず、王に「イスラエルの人々を先祖が住んでいたユダヤの地に帰さなければ、神が恐ろしいことをこの国に引き起こす」と言い、決断を迫った。王が拒否する度に神は王の心を変えようと、血、かえる、ブヨ、アブ、家畜の疫病、うみの出る腫れもの、雹、いなご、暗闇の九つの災害を下す。しかし王は、災害に遭うとモーセの要求を受け入れると言うが、すぐに心を翻し、心を頑なにし、人々を去らせようとはしなかった。そこで神は、イスラエルの人々を除く王やエジプトの人々は勿論、全ての家畜に至るまで初子(ういご)を殺す。するとさすがに、王もエジプト中の人々も恐れおののき、イスラエルの人々を国外に出て行くことに同意した。

 この出来事に、私達は神の恐ろしさを知るが、聖書はそれより怖いのは人間と教える。王は、激しい災害にエジプトの人々がどんなに苦しみ呻いても、モーセが告げた神の言葉に従わなかった。でも、自分の初子が死ぬと簡単に諦め、モーセの言う通りにした。しかしすぐに考えを変え、イスラエルの人々を選り抜きの戦車600台と補佐官を各戦車に付けたエジプトの全軍を王自身が率いて追い掛け、海辺で宿営をしていた彼らに追い付く。彼らはその大軍を見て恐れおののく。海と大軍に進退窮まった彼らは、神に絶叫し、モーセに不安をぶつけた。しかし神は、何かあるとそこに逃げ込もうとするエジプトを去り、前進できるようにする。

 私達も行く手に大きな壁があると、尻込みしたり、過去が美しく、懐かしく見えたりして、そこに逃げ込みたくなることが。しかし聖書は、ただ神のみを信じて信じて前進し、み心のままに生きることが大切で、一番安全なのだと教える。

 神はモーセに命じて、行く手を阻む海を分かれさせ、人々は海の中の乾いた所を前進した。逃がすものかと追い掛けてきたエジプト軍は、左右に壁のようになっていた水が元通りになり、一人残らず海に飲み込まれた。人々は神がエジプトの人々に行った凄まじ御業を見た。神が示したその力は恐ろしいものだったが、それは人々のエジプトへの思いを断ち切り、ただ神にのみ従う者とする為の御業。

 彼らは、あのエジプト軍を赤子の手をひねるように扱い、意のままにする神の偉大さを知った。しかし、その後も自分達が逃げ出して来たエジプトという過去を引きずり続けた彼らに、過去を断ち切ることの難しさを知らされる。実はその後、彼らはエジプト王と同じように10回、直面した出来事を御旨を信じ、そのまま受け入れることを拒否した。そして、40年荒野を彷徨うことで漸く過去を断ち切り、約束の地に入れたと聖書は記す。信仰は、古い自分から新しい自分への旅立ちでもある。古い自分が嫌だと思っても、それに引きずられ易い私達。主イエスは、その私達が過去を断ち切る為に、十字架に掛かって死んだ。そして今も生きて、私達に日々御旨を示し、新しい自分として生きられるよう助け導いている。