メッセージ（大谷孝志師）

私達の最高の献げ物は

向島キリスト教会　クリスマス　礼拝説教　2023年12月24日 マタイ2:1-12「私達の最高の献げ物は」

今日はクリスマス礼拝です。全ての人の救い主、主イエスの御降誕をお祝いする日です。 　今から約2030年前のことです。エルサレムから一千�`以上離れた現在のイラクのユーフラテス川流域に住む占星術の学者達が、ユダヤに全世界に影響力を持つユダヤ人の王となる赤ちゃんが生まれたことを、星の運行から知り、遙々旅をしてユダヤのヘロデ王の居城があるエルサレムにやって来たのです。聖誕劇では三人の博士ですが、聖書に人数は書かれていません。彼らがマリアと共にいた幼子に献げた贈り物が三つ書かれていることから三人との伝説が生まれ、バルタザールらの名前も上げられています。 　また、聖誕劇では羊飼い達が生まれたばかりの「みどり子」を捜し当て、礼拝し、その後直ぐに博士達が来ます。しかし今日の箇所では、既に幼子で、場所も��馬桶がある場所でなく、家になっています。更に2:16に「ヘロデは、…博士達から詳しく聞いた時期に基づいて、ベツレヘムとその周辺一帯の二歳以下の男の子をみな殺させた」とあります。ですから、博士達の来訪は、生後一年以上経ってからと考えられています。彼らが「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。私達はそのお方の星が昇るのを見たので、礼拝する為に来ました」と言うのを聞いてヘロデ王は動揺し、エルサレム中の人々も王と同じになりました。王は外政、内政共に大きな実績を残し、大王と呼ばれました。しかし晩年は権力欲と猜疑心が強く、当時のローマ皇帝が「ヘロデの息子よりヘロデの豚の方が私は安心」と言う程、権力に執着し、王位を脅かす者を暗殺したり、処刑したと記録にあります。ですから彼は、博士達の「ユダヤ人の王としてお生まれになった方」の話を聞き、新たな脅威の存在を感じて恐れ、王の性質を知るエルサレム中の人々も恐ろしい事が起き、社会が混乱するのではと思い、恐れ、動揺したのです。 　さして、博士達は高価な贈り物を携えて長い旅をしてエルサレムに来ました。現代とは違い、治安も悪く非常な危険を伴いました。それでも、ユダヤ人の王となる方の誕生を知った彼らは、その危険を顧みずに来たのです。聖書は、異教徒であるバビロンの占星術の学者達が、主イエスを自分達の王として礼拝に来たと記すことで、主こそが全世界の王であると示しています。 　彼らは占星術という自分達の知識により、ユダヤ人の王となる子が生まれた知り、その子を礼拝する為に来ました。しかし、その彼らが星に導かれて神殿があるエルサレムに来たこと、王が祭司長達、律法学者達を集めて、新しい王の誕生地を問い質し、それがベツレヘムであることが聖書の預言により明らかになったこと。更に、それを知らされた博士達が、そこから再び星に導かれて､幼子のいる所に行き、そこで主を礼拝したと記すことで、占いという世の知識ではなく、聖書のみ言葉、御霊の導きこそが、全ての人を救い主である主イエスへと導き、主に出会わせる、と聖書は私達に教えているのです。 　彼らが星に導かれたことにも大切な意味があります。星は、昼間は太陽の光で見えません。黙示録22:5は「もはや夜がない。神である主が彼らを照らされるので、ともし火の光も太陽の光も要らない」と、この世が終わり、到来する神の国について教えています。しかし、今は御霊という星の光を必要とする霊的闇の世界に全ての人が生きています。星が博士達を救い主イエスに導いたように、聖書の言葉が神の言葉として人の心に響く時、主イエスが闇の中に輝く光として、その人を照らし、主イエスがどんな方で、自分が何者であるかが明らかにするのです。私達は主イエスに「あなたがたは世の光です」と言われています。私達は今、この闇の世界の中で輝く光とされているのです。 　さて、博士達が「ユダヤ人の王として生まれた方は」と尋ねたのですが、ヘロデは律法学者達に「キリストはどこにで生まれるのか」と問い質します。「キリストは」と言い換えたのは、彼もユダヤ人として、神がメシア、キリストをイスラエルを再興する為に遣わすとの預言を信じていたからです。彼は、生まれた新しい王をキリストと認識したのに、神が遣わしたそのキリストを受け入れず、抹殺しようとします。マタイは6節で、ミカ5:2の預言を肯定文から否定に書き換えることで、その主イエスが生まれたベツレヘムが小さな町であっても、この町が全世界の王が誕生する偉大な町になり、この闇の世に希望の光りが輝く時が来るとの預言であり、この世は今、闇で覆われているけれど「全ての人を照らすまことの光」である主が世に来るので、世の人々が真の光に照らされ、救いに導かれる預言であると教えます。 　博士達が昇るのを見た星が再び現れ、彼らをエルサレムからベツレヘムの幼子イエスの所に導きます。星は神の意志により現れ、天空上を移動したのです。野宿しながら羊の群れの夜番をしていた羊飼い達の所に主の使いが来て､主の栄光が周りを照らしたように、自然現象では考えられないことが起き、神が博士達に新しい王の居場所を示したのです。マタイでは、ルカと違いナザレから旅をしてベツレヘムに来たのではなく、ベツレヘムに家が有り、そこに住んでいます。しかし東の方から来た博士達の来訪後、主の使いが夢に現れ、ヘロデの暴挙から逃れる為、エジプトに逃れよと言われて、そこに逃げます。しかしヘロデがBC4年に死ぬと、再び主の使いにイスラエルに戻れと言われます。しかし、代わって王となってユダヤを治めていたアルケラオを恐れてガリラヤ地方に退き、ナザレという町に住んだとマタイは記します。 　ベツレヘムの家に来た博士達は、その家に入り、母マリアとともいる幼子を見、ひれ伏して礼拝しました。彼らは宝の箱を開けて、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げました。黄金は王となる幼子イエスの栄光を象徴しています。乳香は、神殿で献げられた献げ物の一つで、神でありながら、人としての姿をもって現れ、自らを低くして、死にまで、それも十字架の死にまで父なる神に従い、ご自身を献げ尽くすことになる主イエスを象徴しています。そして没薬は、ヨハネ19:39でニコデモ、夜イエスの所に来た(3章)彼が没薬と沈香を混ぜ合わせたものを持って来て埋葬に用いたように、十字架に掛かって死ぬ主イエスを象徴しているのです。勿論、異教徒である博士達がそこ迄考えて、黄金と乳香と没薬を献げたかどうかは不明です。しかし、彼らは自分達に出来る最上、最高のものを遙々旅をして持参し、幼子イエスに献げたのです。それが重要なのです。 　私達も自分に出来る最上、最高のものを主に献げて生きるなら、私達の行いを御霊が助け、それらを用いて、私達の言動を通して神の栄光が現され、福音が伝えられ、世の人々に私達が信じ、従っている主イエスがどんな方かを明らかにするものとする、と教えられます。 　世の人に証し、福音を伝えるのは難しいと思っている私達に、この東の方から来た博士達の行動が、自分にできる事をし、与えられているものを献げて行えば良いと教えます。それに、ペテロとヨハネが「金銀は私にはない、しかし私にあるものをあげよう」と言ったように、私達は主に力と知恵を与えられ、持っているのです。それは、主イエスがキリスト、神の子、救い主と信じる信仰です。私達は何ものにも換えられない方として主イエスを信じます。この信仰こそが、私達に献げることができる最高の献げ物です。 　東の方から来た博士達がその献げ物によって私達に主イエスがどんな方かを示したように、私達の信仰を主に献げ、主イエスこそが救い主、キリストであると世の人々に知らせましょう。それが、主に喜ばれる私達の最高の献げ物になります。